福富書房

かえる。

北鎌倉ハワイアンセンター

喉から口の中を通り抜け、外部に放出された息の音が言葉になる。
口の中を吹き抜ける息の運動は質感を伴い、人間の潜在意識に影響を与えている。
言葉の持つ意味とは別に、口腔内の運動が作り出す音が言葉の印象の下地を形成しているのだ。
「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか/新潮新書」には濁音を含む言葉が、厳つく、手強い印象を与えることが記されている。
確かに「ゴジラ」が「コシラ」だと、ちょっと間抜けな感じがする。「ザワザワ」も「サワサワ」になると風の印象が変わる。

言葉がその国の文化だとしたら、発声の質感もその国の特有のものになるだろう。
日本語は母音が強く多い。同じようにハワイの言葉も母音が多い。
ジャポネシアとポリネシア、島国の言葉には同じような傾向があるのだろうか。

言葉は母音と子音を組み合わせることによって進化してきた。
母音は、舌などの口の中の抵抗を受けずに出て来る音で、言葉が生まれる前から人間が持っていた音だ。
言葉が生まれる前、古代人たちは、主に母音を使って感情を表現していたらしい。
この頃の人類が経験した母なる音の響きが、今も精神の古層に息づいている。

古代のハワイアンたちはハワイ語の会話のみならず、チャントを通じて森と動物、火山や海の波とも交信していた。
日本語に「言霊」というものがあるように、ハワイの言葉にも饒舌な神聖が宿っているだろう。
母音の多いハワイの言葉に、神話や物語がいっぱい詰まっているのはこんなところに秘密があるのかもしれない。

人間は呼吸をして生きている。ヨーガでは体内の淀んだ気を吐き出し、新しく新鮮な気を取り入れる。
吐く息は自然が吸う息であり、吸う息は自然が吐く息、そうして自己と自然は一体となると教えている。

古代の息を多く含んだハワイ語を知りたいと思った。
なんとなく日本語に似ているようでもあり、少しは頭が健康になるような気がする。
ハワイの文化にくわしい森下茂男さんを講師にお招きしてハワイ語講座を始めます。
Mahalo