今回は、ハワイ語の主語について書いてみたい。たとえば、英語では主語と述語、動詞、名詞などで文章が構成されているように、ハワイ語もまた同じように主語や述語、動詞や名詞で構成されていて、主語には主客、所有格、目的格があり、主客には一人称と二人称、三人称がある。また、動詞には現在形、未来形、過去形があるし、英語の定冠詞(=THE)のように名詞の前に定冠詞が付く。
まず、主語について記していく。ハワイ語では一人称の単数と一人称複数があるが、英語ではI=わたし、WE=わたしたちだけだが、ハワイ語では一人称の3人以上では言い方が異なる。さらに、自分が入っている一人称複数でもまた言い方が異なっているのがハワイ語の特徴だ。
一人称単数の主客は、AUまたはWAUで、発音はアウ/ワウ。一人称単数の所有格は、KO`U、 KA`UまたはKU`Uで、発音は前回記したようにKOとUのあいだに「’」=オキナ(`OKINA)という声門弊促音があるので、「コォ・ウ」と発音する。もう少し解説すると、「コ」と「ウ」のあいだを詰まらせるように「ォッ」、つまり「コォ」の後に息を飲むように一拍置いて「ッウ」「コォ(ッ)ウ」と発音する。日本語にはないこのオキナの発音が日本人にとって一番難しいし、この発音をきちんとしないと、異なって意味になってしまう。
ハワイ語ではひとりの場合と二人の場合、または三人以上では言い方が異なる。どうしてそれほど細かく言い方を変えているのだろうか。それは、ハワイ社会ではお互いをファーストネームで呼びあい、人と人との人間関係を大事にしていたからだと、ハワイ語の先生は説明してくれた。
たとえば、三人で海に行ったとしよう。そのとき、「私たちは海に行ってきた」よりも、「私たち三人は海に行ってきた」のほうが一緒に行った仲間を大切に思っていると感じるだろう。一人一人の人格を尊重した結果、こういうふうにいろいろな言い方が生み出されていったのだろう。
ハワイ語にはさらに自分を含む「私たち」と、自分を含まない「私たち」いう一人称複数がある。たとえば、「わたしたち三人は魚を釣ってきた」と、言ったとしよう。このとき、自分も釣りに行ったのだけど、魚は釣れなかった場合、「(自分を除く)私たち二人は魚を釣ってきた」ことになる。このことにより、魚が釣れた人を明確にし、その人たちのことを(発言者)は尊重していることになるわけだ。
ちょっと難しくこんがらかってしまったと思うけど、よく見るとひとつの方程式があることがわかる。一人称、二人称、三人称には共通の言い方がある。
つまり、2人の場合は、一人称、二人称、三人称にはUAがつき、三人以上にはKOUがつくということがわかる。このように、主語の一人称、二人称、三人称にはいろいろな言い方があるということは、古代ハワイ社会ではとても人間関係が大切にされてきたことの現れでもあると思う。次回は、一人称単数の所有格にはなぜ三種類の言い方(KO`U/KA`U/ KU`U)があるのかを書いていこう。古代ハワイアンの、ヒト・モノに対する考え方やとらえ方が見えてくる。
次回は、一人称単数の所有格にはなぜ三種類の言い方(KO`U/KA`U/ KU`U)があるのかを書いていこう。古代ハワイアンの、ヒト・モノに対する考え方やとらえ方が見えてくる。