第4回目にして、いよいよハワイ語の発音について書いていこう。発音はもともと聞いて覚えるのだが、ここではハワイ語の基本的な発音記号の読み方などについて記したい。
ハワイ語の発音は、日本語と同じようにローマ字読みで発音するので、英語圏のネイティブ・スピーカーより簡単に発音できる。
さて、ハワイ語の母音は、日本語の母音の「あ、い、う、え、お」にあたる「A、E、I、O、U」で、発音は「ア、エ、イ、オ、ウ」と、日本語の母音列とほぼ同じ発音をする。ただし、「U」は、日本語の「ウ」よりもさらに口をすぼめて「ウ」と発音する。
ハワイ語の母音はこの5文字だが、音を引きのばす長母音と、短く歯切れよく発音する短母音がある。長母音は、母音文字の上に横線を引いた長音符で表す。長音符はハワイ語でカハコ(kahako)といい、英語ではマクロン(macron)と呼ばれている。母音にカハコがついている場合の発音は、だいたい短母音の倍に音をのばす。
[例]A=ア、Ā=アー
子音は「H、K、L、M、N、P、W、」の7音ある。たとえば、Hの後に母音をつけた「HA(ハ)、HE(ヘ)、HI(ヒ)、HO(ホ)、HU(フ)」がハワイ語の「ハ行」となる。日本語は51語あるが、ハワイ語は5×7=35語で構成されている。ハワイ語の文字は、アルファベットで数えると「A、E、H、I、K、L、M、N、O、P、U、W」の12字しかない。
さらに、ハワイ語の発音にはもう1音、「?」=オキナ(`OKINA)という声門弊促音(または声門破裂音)がある。日本語にはない「ッ」という感じの喉をつまらせた発声だが、これは前の音を喉のおくに飲み込んでつまらせ、次の音を発声する。
この「?」は省略と脱落を表すグロッタル・ストップと呼ばれている。たとえば、Na ?Li?i(酋長たち)はもともとNa Ali?iで、Aが重複して省略されている。Ali?iはポリネシア語のArikiからKが脱落したグロッタル表記といわれている。
ハワイ語には「R」の文字はないが、「L」と「R」の発音を統一するに際して、カメハメハ2世は「L」の文字を選択したといわれている。
また同じように、ハワイ語の文字化の過程において「T」と「V」の発音が削除されている。ハワイ語にはもともと「T」と「K」の2種類の発音があり、カウアイ島やニイハウ島では「T」の発音で会話をしており、同じ意味の言葉をハワイ島やマウイ島では「K」と発音していた。ハワイ語と最も近いとされているタヒチ語の発音と比較すると、ハワイ語の “カプ(Kapu=禁止する)”は タヒチ語で“タプー(Tapu)”を指している。
たとえば、ハワイ語でタヒチのことを“カヒキ(KAHIKI)”と呼ぶが、KとTを置き換えると“TAHITI”となる。ハワイ語の文字化を進めるなかで、言語学者たちは結局「K」音で統一したのである。しかし、おばあさんという意味の「TUTU=ツゥーツゥー」など、今でもハワイ語にはハワイ各島の方言のひとつのように「T」音の言葉が残っている。特に古典芸能のひとつであるメレやチャントでは、「T」音の言葉がたくさん吟じられている。
「V」と「W」の発音もまた同じように「W」の音に統一された。「W」の発音は、Wが頭文字の場合はW=ワまたはヴァと発音し、また、Wが母音の後またはオキナの後にくる場合はHale?iwa「ハレイッヴァ」と発音する。このように「W」の文字で表記するには無理な言葉もあり、「V」の文字も付け加える必要があったようだ。
次回は、一人称や二人称、三人称の言い方、また、主語や述語などハワイ語の文法について、書いていこう。