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かえる。

ハワイ語は食べる(`AI)という言葉からはじまった

北鎌倉ハワイアンセンター

2012年3月14日|森下 茂男

ハワイ語の先生(ハワイ語でKumu `Olelo Hawai`i/クム・オーレロ・ハヴァイイ)は、最初の授業で、ハワイ語は食べるという単語『`Ai(アイ)』が基本となっていると説明してくれた。
ハワイアンの祖先はパプア・ニューギニアの海洋民族だが、彼らは新天地を求めて海に漕ぎ出した。その大きな理由が、人口が増え食料が不足するなどしたためだが、古くは人類の祖先もまた食料不足により民族の大移動がはじまっている。
なるほど、人類の歴史は飢餓の歴史でもある。ハワイアンの祖先である古代ポリネシア人もまた天候の不順や人口の増大などにより島の食料を食べつくし、新天地を求めて島から島へと太平洋を移動してきたわけだ。食べるという基本的欲求を満たす必要に迫られてコミュニケーションがはじまったのだろう。
ハワイ語の食べる`Ai(アイ)は、日本語の50音の最初と2番目の母音、「ア」と「イ」を使っているわけで、いかにシンプルにその意味を伝えることができたかは想像に難くない。
ハワイ語で食べるという`Ai(アイ)の複数形である`Ainaは、食事(アイナ)または大地(アーイナ)を意味しているが、`Aina(アーイナ)=大地という言葉は、ハワイアンにとって食料を入手する場所でもあった。
この食べる=`Ai(アイ)に島を意味するMoku(モク)がついた`Ai Moku(アイ・モク)は支配者を表し、人々に食料を調達し配分するのが島の酋長の役割だった。今でもパプア・ニューギニアの一部では、村一番の芋掘りの名人が酋長になるという風習が残っているが、古代ハワイ社会においてもまた、食料を調達することがいかに重要だったかが、ハワイ語の成り立ちからもわかる。
おもしろいと感じたのが、`Ai Kane(アイ・カネ)というハワイ語だ。`Ai(アイ)に男を意味するKane(カネ)がついた`Ai Kane(アイ・カネ)は、日本でいうところの飲み友達、親友を表すが、アイ・カネは別の意味があって、男を食べるという直訳から同性愛(ホモセクシャル)を意味する言葉でもあったという。ハワイ語にはこのようなダブル・ミーニング、数多くの隠語を含んだ言葉が存在する。古代ハワイアンたちが、会話の中でいかに言葉遊びを楽しんでいたかがわかる。
また、古代ハワイアンの一部には人肉を食べる風習が残っていて、彼ら人食い部族を、食べる=`Aiに人種を表す言葉Kanaka(カナカ)をつけて`Ai Kanaka(アイ・カナカ)と呼んでいた。
ハレイワの町には1930年代に掛けられたアナフル・ブリッジがあるが、このハレイワ湾に注ぎこむアナフル川上流にはかつて`Ai Kanaka(アイ・カナカ)、人食い部族が住んでいたとされている。ハワイアンの祖先をたどれば、パプア・ニューギニアに住む高地民族(ハイランダー)の一部の部族には、20世紀になっても人肉を食べる風習が残っていた。

もうひとつ、おもしろいと感じたのが、`Ai La(アイ・ラー)というハワイ語。これは、`Ai(アイ)=食べるにLa(ラー)=太陽がついて、日焼けするという意味で、太陽に肌を食べられると、色が黒くなる。なるほど、なるほど!
現在でも、ハワイでは、Kama` `Aina(カマ・アーイナ)という言葉がよく使われている。これは、子どもを現すKama(カマ)に土地=`Aina(アーイナ)がついた言葉で、その土地に生まれた人、または現地の人を意味する。たとえば、映画館の入場料や飛行機のチケット、レンタカー代など、ハワイ在住の人にはカマ・アーイナ料金として割引料金が適用されている。
このKama` `Aina(カマ・アーイナ)という言葉が生まれた背景にはハワイの古い民話がある。ハワイの創造詩「クムリポ」の中でハワイアンはタロから生れたとされているが、このカマ・アーイナが意味するところは、ハワイアンはタロと同じようにAina(アーイナ)=大地から産まれた子どもなのである。
古代ハワイ社会では、子どもが産まれると、大地に穴を掘ってその赤ちゃんのへその緒を埋めたという。赤ちゃんは、生れるまでへその緒がAina(アーイナ)=大地とつながっていると信じられており、必要のなくなったへその緒を大地にお返しするという風習によるものであった。
この大地とか土地を意味する`Aina(アーイナ)に、産むとか出産を意味するHanau(ハーナウ)をつけて、`Aina Hanau(アーイナ・ハーナウ)は出生地を表している。
また、この出産を意味するHanau(ハーナウ)と一字だけ異なるHanai(ハーナイ)は育てるという意味のハワイ語だが、ほかに、もらいっ子(養子)という意味もある。
かつて古代ハワイ社会では、親が育てられなくなった子どもは、祖父母や両親の兄弟にもらわれたり、また、お金持ちの老夫婦が買ったりしていたという。とくに、裕福な老人たちは、楽しみの一つとしてもらいっ子を犬や猫と同じようにペットのように可愛がったといわれている。
このように古代ハワイ社会では、飢餓や貧困など何らかの理由で子どもが育てられない場合のセーフティネットとして後見人制度があり、生まれた子どもが男の子だったら、結婚していない父方の兄弟または親戚、つまり子どもにとっておじさんかおばさん、また女の子が生まれたら結婚していない母方の兄弟・親戚のいずれかが後見人として指名され、両親が何らかの理由で育てられなかった場合、親の代わりになって後見人がその子どもを育てたという。古代ハワイ社会では、もらいっ子(養子)という互助制度はかなり一般的であった。
また、`Aina(アーイナ)=大地に、親とか両親・一族を意味するMakua(マクア)をつけた`Aina Makua(アーイナ・マクア)は、一族の土地、つまり祖国を意味するハワイ語だ。
`Ai(アイ)=食べるからはじまったハワイ語の一つ一つには、その成り立ちに深い意味があるんですね。

`Aina Kakahikaka(アイナ・カカヒアカ):朝食
前回、朝の挨拶(おはようございます)をAloha kakahiaka(アロハ・カカヒアカ)と書いたが、食事を意味する`Aina(アイナ)と朝を意味するKakahikaka(カカヒアカ)をつけて、`Aina Kakahikaka(アイナ・カカヒアカ)は朝食となる。

`Aina Awakea(アイナ・アヴァケア):昼食
同じく`Aina(アイナ)に昼を意味するAwakea(アヴァケア)を付けると、`Aina Awakea(アイナ・アヴァケア)は昼食を指す。

`Aina Ahiahi(アイナ・アヒアヒ):夕食
`Aina(アイナ)に太陽が沈み地平線が燃えている状態を指すAhiahi(アヒアヒ)を付けた`Aina Ahiahi(アイナ・アヒアヒ)は夕食を意味している。

Hale `Aina(ハレ・アイナ):レストラン
家を意味するHale(ハレ)に食事を意味する`Aina(アイナ)をつけたHale `Aina(ハレ・アイナ)はレストランをさす。ハワイフードのレストランはHale `Aina Hawai`i(ハレ・アイナ・ハヴァイイ)という。

Ano `Ai(アノ・アイ):(親しみを込めた)こんにちは。
尊敬を意味するAno(アノ)に食べる=`Aiを付けたAno `Ai(アノ・アイ)は、愛情を込めた挨拶になる。直訳すれば、「食べ物さま!」っていう感じかな。

Ano `Ai Me Ke Aloha(アノ・アイ・メ・ケ・アロハ:こんにちは!
Me(メ)はWith、Ke(ケ)は定冠詞Theで、Ano `Ai Me Ke Aloha(アノ・アイ・メ・ケ・アロハ)は英語のGreeteing With Love、「愛を込めてこんにちは」。

同じ`Ainaでも食事の場合はアイナと発音し、大地の場合はアーイナと発音するが、次回は、ハワイ語の発音と発音記号など、ハワイ語の基本的な話をしよう。

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